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大阪高等裁判所 平成3年(ネ)1522号 判決 1992年1月28日

控訴人

濱本與一郎

右訴訟代理人弁護士

中島晃

被控訴人

桶川源次郎

被控訴人兼被控訴人桶川源次郎訴訟代理人弁護士

野村侃靱

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一当事者双方の申立

1  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人らは、控訴人に対し、各自金二二六万七五六八円及びこれに対する平成元年一二月三日から右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

2 控訴の趣旨に対する答弁

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

二事案の概要(争いのない事実及び争点)

次に、訂正付加する外は、原判決の「第二 事案の概要」に記載の通りであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目裏八行目の「右契約につき」を「右契約上の債務につき」と、四枚目表七行目の「執行」を「執行の申立てを」と、同末行から同裏初行にかけて「二三四万一四四五円」とあるのを「二三三万九七二五円(円位未満四捨五入)と執行準備費用一七二〇円の合計二三四万一四四五円」と、七名目表七行目の「上告が」を「上訴並びにこれに伴う強制執行停止決定の申立てが」と、それぞれ改める。

2  控訴人の主張

(一)  被控訴人ら両名は、共謀の上、控訴人から被控訴人桶川に対する名古屋高等裁判所金沢支部昭和五五年(ネ)第四七号、第七一号、同五七年(ネ)第一二六号損害賠償請求控訴事件の執行力ある判決正本に基づく強制執行を妨害する目的で、被控訴人桶川が原告となり、被控訴人野村がその訴訟代理人となって、(1) 右控訴事件の判決の執行力の排除を求める請求異議訴訟を提起し(金沢地方裁判所昭和六三年(ワ)第一二五号事件)、この訴え提起に伴い、強制執行停止の申立をして、右強制執行停止決定を得た、(2) その後、右請求異議訴訟について、請求棄却の判決がなされたが、これに対し、被控訴人らは、控訴を提起し、右控訴提起に伴う強制執行停止の申立をして、右強制執行停止決定を得た、(3) さらに、右控訴事件について、控訴棄却の判決がなされたが、これに対し、被控訴人らは、上告の申立てをし、右上告に伴う強制執行の停止の申立てをし、右強制執行停止の決定を得た。

(二)  被控訴人桶川の提起した請求異議訴訟において、同被控訴人の主張した異議の理由は、控訴人の被控訴人桶川に対する判決(債務名義)は、その後の弁済及び相殺により消滅したというにあるが、右相殺は、不法行為に基づく損害賠償請求債権を受働債権とするものであるから、民法五〇九条の相殺禁止の規定に反することは明らかであって、右請求異議訴訟の提起、上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立ては、故意・過失に基づく不法行為となることは明らかである。

従って、控訴人は、被控訴人らに対し、右請求異議訴訟の提起、上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立てによって被った損害の賠償として、合計二二六万七五六八円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成元年一二月三日から右支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるものである。

(三)  一般に、仮処分命令が、異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において、原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事実がない限り、右申請人に過失があったものと推定するのが相当であるところ(最高裁昭和四三年一二月二四日第三小法廷判決民集二二巻一三号三四二八頁)、民事執行法三六条一項による強制執行停止決定も、実質的には、広義の仮処分決定ということができるから、右最高裁判例に従い、本案である請求異議訴訟について、請求棄却の判決が確定している本件についても、特段の事実がない限り、被控訴人らに故意・過失があったものと推定すべきである。

(四)  一般に、請求異議訴訟とこれに伴う強制執行停止の申立てとは、一体不可分の関係にあるところ、控訴人は、前記請求異議事件及び強制執行停止申立事件に応訴して、勝訴判決を得、また、右強制執行停止決定の取消を求めるため、弁護士に訴訟委任をし、弁護士費用を支払ったのであるから、右弁護士費用は、違法な執行停止によって、控訴人の被った損害である。

(五)  また、被控訴人野村が、被控訴人桶川の訴訟代理人として、控訴人を相手方に請求異議訴訟を提起し、第一、二審とも敗訴しながら、さらに、上告をする一方で、舟津らの代理人として、同一債権について事前求償債権請求訴訟を提起したこと、また、被控訴人桶川が舟津らとの間の債権譲渡契約を合意解約しながら、請求異議訴訟の上告やこれに伴う強制執行停止の申立を取り下げなかったことは、いずれも明らかに違法である。

(六)  被控訴人らの後記(三)(四)の主張は争う。

2  被控訴人らの答弁及び主張

(一)  控訴人の右主張(二)のうち、被控訴人桶川が原告となり、被控訴人野村が訴訟代理人となって提起した請求異議訴訟の提起、上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立てが、故意・過失に基づく不法行為となるとの点は争う。

(二)  控訴人の右(三)ないし(五)の主張は争う。

(三)  被控訴人らの提起した請求異議訴訟及びこれに伴う強制執行停止の申立ては、以下に述べる理由により、何ら不法行為になるものではない。

(1) 被控訴人桶川は、昭和四五年八月当時、機料店を経営していて、その頃、織物業者であった控訴人に対し、機料品等の売掛代金、運転資金、融資金等合計四三三万五〇〇〇円の債権を有していた者であるが、右八月頃、控訴人は、右被控訴人桶川に対する債務を含む合計二〇〇〇万円以上の負債を抱えて倒産し、その後、京都方面に逃げて、債務の整理を放棄した。

(2) そこで、被控訴人桶川は、その債権の一部を回収するため、控訴人の織機等に設定していた譲渡担保権を実行すると共に、他の債権者らと相談をして、当時の控訴人の住所地である石川県小松市の控訴人方に残っていた家族の承諾を得て、その家財道具の一部を処分したところ、これが後に控訴人から不法行為であるとして、損害賠償の請求を受け、被控訴人桶川に右損害賠償の判決がなされるに至ったものである。

(3) 本件で、控訴人が主張している被控訴人桶川に対する不法行為による損害賠償請求権は、この様な事情に基づくものであって、被控訴人桶川の立場からすれば、控訴人に対する売掛代金債権等が回収できないために、控訴人によって四〇〇万円以上に及ぶ損害を被っている一方で、控訴人からの右の損害賠償請求によって、控訴人に対し、四五〇万円以上に及ぶ金員を支払わなければならないという極めて不合理な事態となったものである。

(4) 紛争の民事的解決は、発生した損害について、当事者間の公平な負担と、各自の利益の権衡を目的とすることはいうまでもない。

従って、民法五〇九条が不法行為債権を受働債権とする相殺を禁止する旨の規定を設けているといっても、その解釈運用は、右の目的に沿ってなされるべきであり、そこに存在する紛争の基礎的事実の態様に適合するものでなければならない。

この意味において、被控訴人桶川が、請求異議訴訟で、民法五〇九条の解釈について、種々法律的主張をし、それに伴う各種の訴訟行為をしたとしても、そのことは、何ら公序良俗に反するものではなく、憲法が国民に保障している裁判を受ける権利の行使であり、各審級の裁判所も、その適法性を認めて、それぞれしかるべき措置を講じてきたのである。

(6) 殊に、被控訴人桶川が、請求異議訴訟で相殺を主張した受働債権は、控訴人の被控訴人桶川に対する損害賠償債権の元本全部及び遅延損害賠償債権の一部を弁済した後の残りの一部の遅延損害金の賠償債権に過ぎないのであって、このような場合には、公平の理念ないし信義則上、民法五〇九条の相殺禁止の規定の適用はなく、右受働債権をもって、相殺することは許されると解する余地は十分にあり、被控訴人桶川ないしその代理人の被控訴人野村が、右のように解して、各種の訴訟行為をしたことは、当然の権利行使であって、何ら違法な行為ではない。

(7) そして、右の各訴訟行為において、被控訴人桶川は、裁判所を欺罔するような悪質な行為には及んでいないのである。

(8) 以上の諸点からすれば、被控訴人の前記行為は、何ら不法行為を構成しないものというべきである。

(四)  控訴人は、もともと、訴外舟津らに対し、合計一〇六万七五六八円の求償債務の支払い義務を負担していたのであるから、被控訴人桶川に対する損害賠償債権から発生する遅延損害金につき、右舟津らが、債権差押・転付命令を得たために、被控訴人桶川に対する損害賠償債権の支払いを受けられなくなったとしても、右は、一種の代物弁済に相当するから、控訴人に損害はないというべきである。

三争点に対する判断

当裁判所の争点に対する認定判断も、次に訂正、付加する外は、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏八行目の「請求異議訴訟」の次に、「の提起及び上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立て」を加える。

2  同九枚目表一行目の「提起及び追行」の次に、「上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立て」を加える。

3  同一〇枚目表三行目の「上訴した訴訟行為」の次に、「や、右訴え提起及び上訴に伴う強制執行停止の申立て」を加える。

4  同表六行目の「上告」とあるを、「上訴や、右訴えの提起及び上訴に伴う強制執行停止の申立て」と訂正する。

5  同一一枚目表初行の「右債権を」を「右債権の弁済を」と改める。

6  控訴人は、被控訴人ら両名は、共謀の上、控訴人から被控訴人桶川に対する名古屋高等裁判所金沢支部昭和五五年(ネ)第四七号、第七一号、同五七年(ネ)第一二六号損害賠償請求控訴事件の執行力ある判決正本に基づく強制執行を妨害する目的で、被控訴人桶川が原告となり、被控訴人野村がその訴訟代理人となって、控訴人主張の請求異議訴訟を提起し、これに伴う強制執行停止の申立てをしたと主張する。

しかし、本件における全証拠によるも、被控訴人の両名が、共謀して、右控訴人主張の強制執行を妨害する目的で、控訴人主張の請求異議訴訟を提起し、また、これに伴う強制執行停止の申立てをしたとの事実を認めることはできないから、右控訴人の主張は、採用できない。

7  被控訴人桶川の提起した請求異議訴訟において、同被控訴人の主張した異議の理由は、控訴人の被控訴人桶川に対する判決(債務名義)に記載の債権は、その後の弁済及び相殺により消滅したというにあることは、前記のとおり、当事者間に争いのない事実であるところ、控訴人は、被控訴人桶川の主張する右相殺は、不法行為に基づく損害賠償請求債権を受働債権とするものであるから、民法五〇九条の相殺禁止の規定に反することは明らかであって、右請求異議訴訟の提起、上訴、並びに、これに伴う強制執行停止の申立ては、被控訴人桶川の故意・過失に基づく不法行為となることは明らかであると主張する。

しかし、前記当事者間に争いのない事実に、<書証番号略>、並びに、弁論の全趣旨によれば、(1) 被控訴人桶川は、名古屋高等裁判所金沢支部昭和五五年(ネ)第四七号、第七一号、同五七年(ネ)第一二六号損害賠償請求控訴事件の判決により、控訴人に対し、合計三二四万九〇〇〇円及びこれに対する昭和四八年八月三日から右支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務を負担していたけれども、他方、被控訴人桶川は、控訴人に対し、機料品等の売掛代金や融資金等合計四三〇万円余の債権を有していたが、控訴人は、被控訴人桶川に対する右債務の支払いを全くしなかったので、被控訴人桶川は、その回収に苦慮していたこと、(2) 被控訴人桶川の控訴人に対する右損害賠償債務は、被控訴人桶川が、前記控訴人に対する売掛債権等を回収するために、控訴人の家財道具等を売却してその弁済に当てたことに起因して生じたものであること、(3) 被控訴人桶川が、請求異議訴訟で相殺を主張した受働債権は、控訴人の被控訴人桶川に対する前記損害賠償債権の元本全部及び遅延損害賠償債権の一部を弁済した後の残りの一部の遅延損害金一〇六万七五六八円の賠償債権に過ぎないこと、(4) 被控訴人桶川及びその訴訟代理人の被控訴人野村は、民法五〇九条の相殺禁止の規定にかかわらず、右のような場合には、公平の原則ないし信義則上、被控訴人桶川の控訴人に対する債権を回収するための一手段として、右債権を自働債権とし、これと、控訴人の被控訴人桶川に対する不法行為に基づく損害賠償債権に対する遅延損害金の賠償債権の一部を受働債権として、相殺することは許されるものと解釈して、相殺の意思表示をし、前記請求異議訴訟やこれに伴う強制執行停止の申立てをしたものであること、(5) 裁判所も、右強制執行停止の申立ては、その主張自体に照らし、理由があるものと認めて、強制執行の停止決定をしたこと、以上の事実が認められる。

そして、右のような事実関係の下においては、被控訴人桶川及びその代理人弁護士である被控訴人野村が、民法五〇九条の相殺禁止の規定にかかわらず、公平の原則ないし信義則上、控訴人の被控訴人に対する前記遅延損害金の賠償債権を自働債権として、相殺できるものと解釈したことは無理からぬことであって、被控訴人桶川が、右相殺の意思表示をし、前記請求異議訴訟やこれに伴う強制執行停止の申立てをしたことをもって、これを一概に不当な行為ということはできないと解すべきである。

従って、右の点に関する控訴人の主張は採用できない。

8  さらに、控訴人は、一般に、仮処分命令が、異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは、本案訴訟において、原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事実がない限り、右申請人に過失があったものと推定するのが相当であるところ、強制執行停止決定も、実質的には、広義の仮処分決定ということができるから、本案である請求異議訴訟について、請求棄却の判決が確定している本件についても、特段の事実がない限り、被控訴人らに故意・過失があったものと推定すべきであると主張する。

(一) しかし、仮処分と請求異議訴訟の提起及び上訴に伴う執行停止とは、その制度の趣旨・目的を異にするから、請求異議訴訟の本案について、原告敗訴の判決が確定したからといって、他に特段の事情のない限り、右請求異議訴訟の提起及び上訴に伴う執行停止を求めてその旨の停止決定を得た申立人(原告)に、故意・過失のあることが推定され、不法行為を構成するものとは解し難い。そして、前記7に認定のような事情のある本件においては、被控訴人桶川が、被控訴人野村を代理人として、控訴人主張の強制執行停止の申立てをしてその決定を得たことは、法律上認められた行為であって、控訴人主張のように、違法な不法行為になるものとは解し難い。

(二) のみならず、被控訴人桶川の前記請求異議訴訟の提起及びその上訴に伴う強制執行の停止決定により、控訴人が、名古屋高等裁判所金沢支部昭和五五年(ネ)第四七号、第七一号、同五七年(ネ)第一二六号損害賠償請求控訴事件の判決(債務名義)に基づき、被控訴人桶川に対し、強制執行をしてその満足を得られなかった間に、訴外舟津らが、控訴人主張の債務名義に基づき、控訴人を債務者、被控訴人桶川を第三債務者とする債権差押・転付命令を得たために、控訴人が、被控訴人桶川から、右判決に基づく一〇六万七五六八円の損害賠償債権の弁済を得られなくなったとしても、控訴人が、その主張の一〇六万七五六八円の損害を被ったとは認め難いというべきである。なぜなら、前記当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、もともと、訴外舟津らに対し、右と同額の合計一〇六万七五六八円の求償債務の支払い義務を負担していたことが認められるので、法律上は、控訴人は、前記判決に基づいて、被控訴人桶川から弁済を受けた一〇六万七五六八円をもって、右舟津らに、その債務の弁済をすべき関係にあって(その意味では、訴外舟津らが、前記債権差押・転付命令を得てその弁済を得たことと実質的には変わりないことになる。)、右一〇六万七五六七円を、自己のために、究極的に取得し得る関係にはなかったというべきであるからである。

なお、仮に、控訴人が、右強制執行の停止により、その主張の右一〇六万七五六八円の損害を被ったとしても、右損害は、その性質に照らし、通常の損害ではなく、特別事情による損害というべきところ、被控訴人桶川において、前記強制執行の停止により、控訴人が右の如き損害を被ることについて、これを予見し、又は、その予見可能性があったことについては、主張立証がないから、この点でも、控訴人は、被控訴人桶川に対し、右損害の賠償を求めることはできないというべきである。

(三) また、請求異議訴訟の提起及び上訴に伴う強制執行停止の申立てをして、その旨の決定を得ることは、法律上制度として認められていることであり、かつ、弁護士費用は、訴訟費用として認められていない我が国の現行制度の下では、原告が請求異議訴訟の本案に敗訴し、その申立てにかかる右強制執行停止決定が失効ないし取り消されたからといって、当然に弁護士費用の賠償が求められるものではないと解すべきである。ただ、右強制執行停止決定に関する弁護士費用については、強制執行停止の申立てをした申立人主張の権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、申立人が、そのことを知り又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのに、敢えて強制執行の申立てをしたなど、強制執行停止の申立てが、制度の趣旨目的に照らして、著しく相当性を欠くと認められるときに限って、不当な訴訟行為による損害として、弁護士費用の賠償が求められるものと解すべきところ、本件における全証拠によるも、右事実を認めることはできない。

(四) よって、以上いずれにしても、被控訴人桶川が、前記強制執行停止の申立てをし、その旨の決定を得たことを理由とした控訴人の損害賠償請求は理由がなく、右の点に関する控訴人の主張も採用できない。

9  なお、控訴人は、被控訴人野村が、被控訴人桶川の訴訟代理人として、控訴人を相手方に請求異議訴訟を提起し、第一、二審とも敗訴しながら、さらに、上告をする一方で、舟津らの代理人として、同一債権について事前求償債権請求訴訟を提起したこと、また、被控訴人桶川が舟津らとの間の債権譲渡契約を合意解約しながら、請求異議訴訟の上告やこれに伴う強制執行停止の申立を取り下げなかったことは違法であると主張する。

しかし、原判決九枚目表三行目から同一一枚目九行目までに記載の同一の理由により、右被控訴人野村の行為は、何ら違法行為ではなく、不法行為を構成しないものというべきであるから、右の点に関する控訴人の主張も、採用できない。

四以上の説示からすれば、控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものであり、これと同旨の原判決は正当であって、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官後藤勇 裁判官東條敬 裁判官小原卓雄)

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